ポスト井上の日本声優
そいや。
『ハヤテのごとく!』のキャストは、『さよなら絶望先生』に言う「原作者の要望通り」だよなあ。
え? いや、まあ、マリアは田中理恵じゃなくて黒河奈美なんじゃないかなあせめて大原さやかか沢城みゆき小林美佐も可、以外に言いたい事はないんですが。猪口有佳も面白そうだなあ。松来未祐も。堀江由衣も。
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というのはつまり、所謂ポスト井上喜久子系の声優の系譜の中で、田中理恵が占める位置ってのはただの本流みたいに思われても困る、という事です。
それぞれ、特徴をあげると。
・田中理恵
声が大きいので、ドラマチックな見せ場は十分こなせる。が、それ以外は全くダメ。
色んな声が出せ、頓狂な演技プランも立てるが、それを他の声優とすり合わせていくことができない。だから、不即不離の距離を維持すべきツッコミ役には向かない。そういう意味ではゲーム的。
声と演技プランのセットのひとつに偽井上喜久子がある、という感じ。
・黒河奈美
細かな抑揚には優れる。キャラクター間の距離感も的確に掴む。ために、独り言や心中ツッコミは一級品。派手な芝居は見せないが、出来ない事はなさそうな気がする。贔屓目。
ただ、芝居に入るタイミングがやや早く、相手役の芝居を受け損ねているときがちょこちょこある。あと語尾まで意識が回ってなかったりも。これもまあ、ゲーム的。
・大原さやか
声量はあんまりないので、ドラマチックに行こうとすると馬脚をあらわす。
感情の爆発を使おうとしなければ、ポスト井上系で最も破綻のない声優。年の功だが。声低く行くと抑揚が飛ぶのはこれも声量がないから。パチモン井上喜久子、と呼ばれがちなのは偽おねえちゃん演技以上に声低くも入れますよオプション自慢なとこだと思ってますが、まあ、俺だけ。地声より低いところこそ井上喜久子で代用が利く、と思うんだけどなあ。
なんにつけ、破綻は少ないので、ツッコミ役もやらせればこなす。
・沢城みゆき
所謂偽おねえちゃん芝居、の名手。声を上ずらせて感情の変化をなるべく使わない、みたいなわっかりやすーい演技プランをしっかりこなす。ちなみに井上喜久子の演技自体は案外落ち着きなく感情を揺らすようなものだったりしますよね。地声でも作った太い声でも喜怒哀楽をしっかりこなせるのが喜久子さんがフツーにいい声優である証だったりしますが、まあ、それは措く。
極めて緻密な演技プランをしっかり守り、その限りでは上手いが、生々しいリアリティに欠ける。常に81点を出す声優。マウスなのに。
マリアはプランニングはしやすい役柄と思われるので、こなせるでしょう。
・小林美佐
井上喜久子と大原さやかのちょうど中間くらいの声質。声量も。芝居も。
デビューしてから間がない分だけ声の若さがまだ残っていて、感情も出きってはいない。三十路にして発展途上。三年後にはスゴいかも。
マリアのベースイメージが井上喜久子っぽく、ならば、一番近い。
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というわけで、ポスト井上喜久子の本命は小林美佐でどうなの?
猪口、松来、堀江は解釈の変更。最終ラインから、それぞれ中盤の底、左サイド、センターフォワードに。
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ところで、ハヤテがマリアの前でちょっとはしゃぐ感じの、いいところを見せたい下心感、は白石涼子という女性のどこにあるリアリティなんだろう? 本当に年上のお姉さんに下半身で憧れているみたいだ。