http://d.hatena.ne.jp/deillumination/20060531#1149013486
 樋口智恵子をもう一人の坂本真綾として、その観点から二人の歩みを振り返りつ、美少女/少女漫画/ロボットの接点について考えてみる作業などされるとよい、と思いました。
 樋口智恵子は『水色時代』『ケロケロちゃいむ』と少女漫画アニメ化作品でキャリアを重ね、外画の子供役をしばしばこなしていた坂本真綾は『天空のエスカフローネ』で本格的にアニメ声優デビューを飾ります。『水色時代』も『天空のエスカフローネ』も96年4月放映開始。その開始時点から中々に因縁めいた、二人のアニメ声優としてのキャリアなのでありました。
 周知の通り、『天空のエスカフローネ』は少女漫画テイストと巨大ロボットを融合させようという意図の下に作られた作品であり、当時高校生だった坂本真綾がメインヒロインに起用された理由もそのあたり、思春期の女子のリアリティーの追求にあると言え、この方法意識は樋口智恵子の少女漫画アニメ化作品での起用と同じものであると言えます。
 本職の声優ではなく素人を起用し、あるリアリティーを求めていく方法は、アニメの世界においては一つの伝統芸能であり、『豚』以降の宮崎アニメなどでその方向性はとことんまで突き詰められていき、『天使のしっぽ』の登場に至ってオタク向けアニメの主流に躍り出るわけですが、まあそれは話を急ぎすぎという奴でして。
 ポストエヴァンゲリオンの最初の大作のヒロインに抜擢された坂本真綾と、同じTX系ではありつ、一ツ橋のあまり気合を入れていないアニメ化作品からキャリアを始めた樋口智恵子
 その後、Whoops!を経ても、坂本真綾こそが日向を歩き樋口智恵子が日陰を歩くという関係は変わらず、一方はビクターの看板アニソン歌手に出世し、もう一方は『ToHeart』『あずまんが大王』『ぱにぽにだっしゅ』と大作への出演はあるものの今ひとつブレイクしきれない声優に落ち着いてしまった。
 このような樋口智恵子の経歴と『バーチャロン』的なものの系譜は不思議に重なり合うように見えますが、如何。
 

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.tsuyokiss.jp/staffcast.html
 予想通り。
 前々から不思議なのは、原作ゲームの原画家がキャラクターデザイン・総作画監督を務めない事や、原作ゲームのシナリオライターが全話のシナリオを書き下ろさない事は責められないのに、キャストの変更だけはみんなぶーぶー文句を垂れる、という事で。
 メディアを変更し、作品を再構成すれば、当然求められる演技・声質も変わってくる。だからキャストを変える、というのは至極当たり前な話だと思うのだけれど。
 声だけを聖域化する考えは、一見声オタ的に見えて、その実作品の有機的な一部としての声、という観点を欠いているように思うのだけれど。
 いやまあ難しいんだよね。声についてどう考えるかって。キャスティングって大人の事情が絡んでくる部分でもあるし、大人の事情までで思考停止してる人も山ほどいるし。
 ところで無論声だけを聖域化する考え方とは例の「事が声優に及んだ瞬間あの憤ろしい秘密の目配せを交わし曖昧な微笑を以ってその話題を圧殺しようとする手合い」とも共通する態度でありまして、声優ファンとアンチ声優ファンはかくのごとく通底しあう、というイヤなお話。