氷室乃雪嬢のお誕生日ですか。『花咲くオトメのための嬉遊曲』とか言う奴の。
 キモいものを置いておくので読まない事をおすすめします。
 のゆきちの活躍はhttp://www.elfics.com/market/exec/book/detailhttp://d.loversoul.jp/へどうぞ。
 去年の奴も置いておきますね。http://kaolu4s.jugem.jp/?eid=188
 
「バレンタインデーね」
「君の誕生日、じゃないのかい?」
「それらは別に背反的である、とは言えないと思うけれど」
「実はそうなんだ、あまり知られていない事だけど」
「へえ?」
「一日に二つ、なんてお祝い事は僕たちには多すぎるのさ。だから、どっちか片一方に集中しないとまともなお祝いはできない」
「努力と根性でなんとかならないものなの?」
「非科学的だね。僕ら――ポスト江川世代の野球人にはあまりにも似つかわしくない」
「藤田監督、亡くなられたわね」
「名将が次々と逝く」
仰木監督が亡くなられたばかりなのにね」
「そのあたりはもう歳が歳だから……」
「ええ。藤田ジャイアンツも遠くなりにけり……。という事は、そのエースの作法ももう遠くなってしかるべきね」
「そう来たか」
「藤田ジャイアンツもついには森ライオンズにはかなわなかったわ」
「そうだね」
「森ライオンズといえば、根性野球じゃないかしら」
「セオリー野球、と一般には言うけれど」
「セオリー、理論的な最善解を間違いなくこなし続ける能力を根性、て言うのよ。出来ねばならない事、出来るしかない事が出来るという能力」
「でも、その森ライオンズも長嶋ジャイアンツには破れたわけでさ」
「短期決戦なんて水物だわ」
「藤田ジャイアンツが森ライオンズにかなわなかった、なんて言ったのはどこのセクシーな唇だったかな」
「これよ。……私が言ってるのは90年のシリーズの事じゃなくて、それからのリーグ戦の成績の事だわ。西武時代の森監督は二年連続で優勝を逃した事がないのよ」
「知ってる。強かったね。でも、その森野球だって過去のもの。今の最先端は無理をしないさせないバレンタイン野球だよ」
「だからお祝い事も分業制なのね」
「うん」
「シーズン最高勝率は三年連続ホークスだわ」
「つまり金権補強有理、と」
「そうではない、とは敢えて言わないけれど」
「ど?」
「根性ある超一流選手を集める、というのが本来で、お金が掛かるのはまあ、二次的な事だわ」
「松中には根性がないんじゃないかな、今の議論に寄れば」
「勿論よ。出来なければ仕方のない事、が二年連続で出来てないのではね」
「最新の三冠王、去年の二冠王を高々二週間の不調で貶めるのは首肯しかねるな」
「……確認しておきたいのだけれど、貴方は今日は私の誕生日だ、と主張したいのよね?」
「そんな事言ったかな」
「私がバレンタインデーだ、と言ったら、それを肯定しなかったわ」
「肯定でなければ否定、なんてそんな乱暴な二分法があるだろうか」
「選一的な世界観を提示したのは貴方の方だわ」
「むう、それを言われると辛い」
「でしょうね」
「で?」
「つまり、いらないのね、と聞いているのだけれど」
「そ、それは、チョコレイトではないですか!?」
「しかも本命。どうなのかしら?」
「ごめんなさい」
「そう素直に出てくれればこちらだって色々と対応がある、というものだわ。
 ……母乳入りよ」
「え……」
「あ、引いた」
「!?」
「ふふふふ。今年は私の勝ちね」
「……二人の誕生日・茶色のそれはチョコではないのでは!? へ続く」
「……流石にそれはやらないわよ?」