声力・演技力・歌唱力・ルックス・パーソナリティーアイドル声優の5ツール*1として、これを全て兼ね備えている声優はすごい、という思想があったとする。えー、まあ、一番近いのは野田順子だと個人的には思います三冠部門のタイトルにまでは絡んでこない感じがまさにそれ、なんだけど、この5ツールってアングルに乗り損ねるとアイドル声優は演技が上手い事にしてもらえないのかな、と思った。
 言い換えると。
 顔がいい、芝居以外での露出が多い声優のファンは言い訳をしたがる=声優が声優である以上応援している声優が演技も上手い事になっていてくれないと困る、ということ。
(ついき)
 つまりはアフレコ技能者主義の残滓とどう決別するか、という話であって、声優は顔だ*2、と思い決めることから語りだす知的誠実が、現在の声優ファンには求められているはずだ。
 あと歌が上手ければ芝居は下手なことにされてもいい、というのも極めて退廃した形の技能者主義であろう。歌という技能を持っていれば、その声優を肯定することに後ろめたさはないのだ。だから、アンチに芝居にケチをつけられたとき、本気で反論してアフレコ技能者主義者であるかのように偽装する必要をファンが感じない。場の平和のために、声優のアフレコ技能に関する真実は葬り去られる。はたして、これが本物のファンの行いだろうか。
(さらについき)
 恐らく、声優の5ツールアングルに最も必要なのは、基本的には最も得がたいルックスである。
 野球では、足が速いことが第一条件*3、それから肩がついてくれば守備はよほどの事がない限り上手いはずで、そんな選手がフリーバッティングで柵越えを連発――身体能力の高い選手なら引っ張れば打球は大抵よく飛ぶのだが――すると、5ツール、という言葉が取り沙汰されるのだが、大抵彼らのプレーヤーとしての大成を阻むのは、打撃力の欠如である。身長以下の打率が、彼らを花形選手から二軍の帝王、よくて代走・守備固め・代打三番手要員へ追いやるのだ。
 ここで、安直に、演技力を打撃力、声力を長打力、ルックスを走力に準えるならば、美人声優は大抵芝居が下手、という身も蓋もない結論が導出されるわけだが、声優においては身長以下の打率に当たる現象がかなり主観に左右される形でしか存在しないため、後ろめたさに駆動された信者の大合唱により偽りの5ツール声優が成立してしまう。
 なんとも由々しき問題である。

*1:野球用語。1打撃力2長打力3走力4肩力5守備力の五つの能力を言い、これを兼ね備えている選手を5ツールプレイヤーと称してありがたがる。代表例は、簑田浩二松井稼頭央など。

*2:声や演技は、「声優が好き」というスタンスから語る限りにおいて、評価するかしないかの基準にはなっても好くか嫌うかの決定要因にはそもなりえない。結局、好きになるためにはルックスだとかパーソナリティーだとか、アフレコ技能とは関係のない部分にフックを求めるほかない。

*3:「思うにコムニストに とってのユーモアというのは、野球選手にとっての俊足のようなものです。それは本来存在すべきですが、実際に見られることは余りに少ないのです。」http://members3.jcom.home.ne.jp/0129252601/Ou.html