天野こずえ『ARIA』10巻
- 作者: 天野こずえ
- 出版社/メーカー: マッグガーデン
- 発売日: 2007/03/30
- メディア: コミック
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で、多分、アニメ化の際に、アニメのスタッフ、佐藤順一とか吉田玲子とかが、そのクソくだらない(としか彼らには思えない)名所旧跡見てある記の奥に、水先案内人同士の心の交流とか思春期の心の揺れとかなんとかそういうものが眠っていることを見つけだしてしまったんだ、と思うんですわ。ええ、まあ、つまり『クレセントノイズ』的なものを。『クレセントノイズ』は『クレセントノイズ』で嫌いじゃないんですが、そういう部分をぐっと押さえ込んだのが『AQUA』の素晴らしさの源だと考えていた俺にとって、それは余計なことしくさりやがって以外の言葉の出てこない事態なわけですが、自分という作家を理解してもらえた、ときっと天野こずえは思ったんですね。そしてアニメが売れてしまった以上、『クレセントノイズ』的なものを押さえ込む努力にあんまり意味がない気がしてしまい、それを『ARIA』の世界にブチ撒けて台無しにすることへの躊躇も吹っ飛ぶ。
その結果がただいい景色を見に行く話のひとつもないこの十巻の体たらく、だと思いました。
つか、水路の移動にコマ全然使ってないのとか、どうよ。言葉に頼りすぎだしさあ。灯里の凄腕っぷりなどは何より絵で示して欲しいとこやん。バストアップ多すぎ。大ゴマ多い割に背景が全然描き込まれてない。冬の季節感ゼロ。
ああっ、もう! こんな漫画に誰がした! いや、春になれば。春になればなんだかんだでマトモになるはずだ! 春が来て、ずっと春だったらいいのに!
ええ。まあ、壁本。
一番ひどいのは「トラゲット」。偉大さを卑小さのネガとしてしか描けないような俗悪さ、は『AQUA』『ARIA』に最もあってはならないものではなかったか。『はやて×ブレード』ならアリな展開でも『ARIA』だとナシ、って事はあっていいはずでしょう?