『シムーン』での能登との再会が終わりかけていた桑島に新たな息吹を与えた、というストーリーはどうだろう。
 どうだろう、と言われましても。
 強い感情の処理が変わったと思うんだ。桑島。『シムーン』以降。清水香里的ないたたまれなさ直球勝負から、能登的な余韻勝負へ。
 余談ながら、いたたまれなさ直球勝負しかできないこと、が清水香里が本気を発揮する場の少なさにつながってもいるだろう。千葉紗子能登麻美子以降の時代にあっては、能登よりも若いにも関わらず、清水香里の芝居は古いのだ。
 実のところ、この古さは80年代前半*1生まれの、千葉能登時代の魁となったWhoops!の二人を除いた、十代からキャリアをスタートさせた声優一般につきまとう。仙台エリに感情の処理が最も近い声優を探せばそれが日高のり子である、という事例も、このような古さのまさに典型的な表れだ。
 無論、清水香里の出番が決して少なくはないことからも古い演技の声優が求められていないわけではないことはわかる。が、彼女に今求められているのは与えられた分限を守り通す小器用さ、アニメ表現におけるプラスマイナスゼロとしての価値が中心である事も明らかだ。
 もうちょっと、大きなお友達向けアニメの、自由に振舞えるメインヒロインに古典派が増えて欲しい、中原麻衣ほどの中心の記号としての才能までは求められない時代が来て欲しい、と思うのだけれど。

*1:80-84年