今日のどうかとおもった声優記事二本。
http://blog.goo.ne.jp/skripka/e/eeffe51734eb44de468ccd053bc51614
 釘宮理恵の声質の特異性をツンデレ性に即して語るにあたって比較対象として田村ゆかりはいかにも不相応。だいたい「ツンデレのロリ声というと、田村さんを引き合いに出す人もいる」というが田村ゆかりのロリツンデレってどのキャラなのか。『the SOULTAKER』の明日香? 『かしまし』のとまり? 『アイドルマスターXENOGLOSSIA』の伊織? いずれにせよ、ツンデレかもしらんがロリっつうとずれるんでね?
 何故斎藤千和とか水橋かおりとかのいかにもなところを避けるのか。
 釘宮のいいところは、少年役がつとまるくらいに凛々しいところ。千和との比較ならそれは火を見るよりも明らか。ゆかりんとの比較だと、その凛々しさは上手く抽出できない。声質論は差異から語っていくしかないので比較対象に誰を取るかは重要よ。そのためには精緻な声優の分類が必要になってくるわけで、声優サッカー*1のようなメタファーはその分類を考える一助にはなるだろう。藤村歩は中盤の底タイプだからサイドでも真ん中でも前で仕掛けてナンボのくぎゅとは違うと思うんだ。あと何度も言うけどマシンガンは出来ても出世しない。感心はさせても感動はさせないから。一方トロっちい独特の間はそれだけで人をどこかへ連れて行くことが可能。井口裕香が「ま、いっか」とあの間で言った瞬間、我々はインベルと一緒に恋に落ちたのだ。
 あと、言うまでもないが、ロリキャラをさんざこなしていた時期とツンデレキャラばかりやっている時期はずれている。ロリ声が出せなくなって、釘宮はツンデレに転向したのだ。すごく勉強になるアニメの演出論の記事が書ける人が、こと声優となるとこういう基本的なパースペクティブさえ欠いた記事を書いてしまうこの事態に、声優批評の夜明けがまだ遠いことをつくづく痛感させられる。
 さらに言うとKOTOKOもロリ声っつうけどあれもジャンル違うよね。あれは釘宮理恵よりも石毛佐和とか成田紗矢香に近い。声優サッカー用語で言えば、右SBでなく左SB。
 それから、榊原ゆい。いやあ、はまじまでツンデレと言われてしまうとねえ。ねえ? プリーシアじゃねえのか。そしてプリーシアならあの手のテンション高くそこまで早口でもなく抑揚の効いていない口調が棒、として嫌われたりもしがちであることは明白なんじゃなかろうか。プリーシアに関してはこんなもんだなで納得は出来たが、積極的に評価する理由はまあないなあ。
 もひとつ。恐らく釘宮理恵は自分でブランド化を図ったわけではないと思う。そんなプロデュース全体の方向性を考える権限は釘宮理恵のような歌手活動に重きを置いていない声優には多分ないから。オーディションを受けたり、指名で仕事もらったりしてるうちにツンデレキャラが多くなって、で、そういうイメージで見られるようになっただけでしょう。
 なので、声優のキャリアの話を書くときには、主体を上手くごまかすのがセオリーよ♥
 ところでこの記事から離れて、釘宮誉めの別路線、ツンデレもロリもショタも綾波芝居もできてすごい説に関しては、ある程度はね、と認めつついい加減その辺はちょっとした声優なら誰でもやらせりゃ出来ると気付け、とはいいたい。
 少年声はもうホントみんなできる。ほぼやるかやらないか。相澤みちるだってそれなりに男の子に聞こえるんだぜ、だって。小向美奈子ですら!
 ロリもやらせりゃみんなやる。根谷美智子でさえやる。しかもエロい(ex.『the SOULTAKER』)。ただ、くぎゅのロリは、かつての日本一の妹声優だった時期に比べれば明らかにキレがない。
 綾波芝居もみんなできるよね。
 少年・幼女・綾波系はやらせりゃみんなやる。
 そういうのを捕まえてさぞ演技の引き出しが多いかのように言い募るのはどうかと思うんだ。
 ただ、綾波芝居、と簡単に切り捨てられないものがくぎゅの陰気な女の子の演技にはあって、特に『LOVELESS』の倭はかかずに殆どエロ負けしていなかった。まあ『LOVELESS』も随分前のアニメではあって、今同じことができるかっつったら怪しい気はするけど。

 次はこれ。
http://news.livedoor.com/article/detail/3612416/
 棒読みなんて本当に実在するんですかねえ、という疑問をまず持ってないあたりがもうダメ。根本的にダメ。
 あったとして、それは即悪なのか、を粘り強く考える姿勢もない。
 それと。
 辻谷耕史のサイトから。
http://www.ocv.ne.jp/~cozy/qa07.html

 また声優のギャラはベテランと新人にあまり差がありません。
 10年以上仕事している人でも基本ランク16.000〜18.000円という人が
 全体の半分以上。

 この記述からどうやって

仮に低予算の作品で知名度のあるベテランを1人呼んだら、中堅どころは誰も呼べなくなります。そうなると結果的にギャラの安い新人を起用せざるを得なくなるのです。作品の出来を考えるならば、演技力に乏しい声優を起用することは避けたいところですが、そうも言ってられないのです。

 という結論が導けるのか。
 てか、アニメの音響制作費を圧迫するほどのギャラを取る声優って一握りの中のさらに一握りでしょう。
 えーと、例の『BAMBOO BLADE』の流出資料で130万。
 スタジオ使用料、音楽、音監のギャラを多めに見積もって半分として、65万*2。辻谷サイトの記述によれば、大抵の声優のギャラは3万くらい。1話で30万取るスゲえ奴が来てもあと11人も並の声優が使える計算ですね。『BAMBOO』の予算はまあ標準やや高め、というところらしい、いろんな情報総合すると。
 なんかもう結論先取でどうしようもないわ。
 ところで多分この記事で槍玉にあがってるのって『ソウルイーター』と『マクロスF』だと思うんだけど、その辺が音響制作費ケチっているとあの画面を見て思えるんだったらちとスゴいよね。中島愛の可愛さがわからない奴は両耳を打ち抜いて死ぬべきだが、小見川千明は非常に難しい。なんつうか、別にあれで間違っちゃいないんだけど、たまにものすごく正しいんだけど、その正しさが殆ど言語化不可能。マカの生真面目で潔癖で、結局まだまだ未熟な感じ、がひたすらに生硬な小見川の演技と重なり合う瞬間、がたまにある、つうか。太くてハスキー、ていう声質そのものはマカのキャラとしてすごく正しい。CDドラマが竹内順子っていうイメージの延長線上ではあるのだ。
 ただ、マカに対してだけプロの声優でないキャストを使う形でのリアリティへのアプローチを取った意味がわからない。そこまでマカって特権的な主人公じゃないし。
 んーと、つまり、ああいう声優を主人公に起用するってのは、小見川千明の成長、というか、声優的演技への馴致の過程をマカの成長と重ね合わせさせたい、つまりマカの成長に関してはメタな位置からも描いていきたいという意志のあらわれ、と一般には考えることができるはずなんだけど、マカの成長って『ソウルイーター』のそんなにも特権的な軸だったろうか、という疑問があって。マカってそもそもしっかりものだからある程度出来上がった声優にぱっとやらせてシュタインとソウルの狂気の話とかクロエとメデューサの葛藤とかをかっちり達者な声優たちで掘り下げていく路線もあったはずで。
 と書きながら脳内再生を繰り返すうちにマカが小見川千明以外ありえなくなってきた。慣れだよなあ、というところでオチとす。

*1:詳しくはhttp://kaolu4seasons.hp.infoseek.co.jp/okiba/seiyu_dict.htmこの辺を。

*2:微妙に過大かも。やってできないことはない数字のようだけれど。