水樹奈々、というのは、恐らく声優シーンの追いかけ方によってまるで違う印象を受ける声優なのではないか、と思う。
 アニメ中心に追いかけると、大作からはいまいち声がかからないけれど与えられた仕事をきっちりこなす地味で職人的な名バイプレイヤーにしか見えない。声のバリエーションの少なさは、むしろパフォーマンスの安定感につながっている。喜怒哀楽の変化はくっきりしているし、かといって感情の変化がぎこちないわけでもない。強い感情の乗った一発もある。生々しい芝居はやや不得手だけれど、声がやや割れているのでそこまではペカペカした質感でもなく芝居が成立する。まあ贅沢を言えば、ここのところ俺が一番感心した声優の芝居っていうのは、『マクロスF』で客席のランカにスポットが当たったシーンでのナナセ役の桑島法子のリアルにもほどがある奇声だったわけだけれど、ああいうことは水樹奈々には望むべくもない。いや、桑島法子以外にはそんなに望むべくもそもそもなくて、あれ*1ができるからこそあんなにもああなのに仕事が引きもきらないわけだが。閑話休題。ともかく、水樹奈々は十分に実力のある声優とみなしうるわけですよ、声優アニメファンの観点からは。
 で、恐らくこのような見方は業界内部でも共有されているのではないか、と考える合理的な根拠として、あのキャラソンとか絶対出なそうなアニメへの大量出演、奈々ちゃん仕事選べよ現象があるわけです。
 その一方で、声優を、というか、水樹奈々をライブ・イベント中心に追いかけた場合、どうにも水樹奈々は歌は上手いが演技は残念な声優、という評価になるようだ。この評価はもう俺にはまるで理解できないのだが、「水樹奈々ファンに77(奈々)の質問」とかで検索すると、自称水樹奈々ファンによる水樹奈々の演技への否定的評価をいくらでも見ることが出来る。
 いったい水樹奈々、「やっほー! 千紗都だよ!」のミニアルバム*2のラジオCMの時既にきっちり原稿が読めていた水樹奈々の芝居のどこに不満があるのだろうか。
 わからない。

 というようなことを
http://nakazato.blog.shinobi.jp/Entry/81/

水樹奈々さんのアリソンはかなり好感触。必殺技とキャラソンのないアニメではかなり安定してきた感じがします。

 という記述を読んで思った。

*1:恐らくは、強い感情をジャストサイズの声の変化で表現できる、という能力。大きすぎれば嘘臭くなり、小さすぎれば不明瞭になる。

*2:歌唱技術がこの時点で完成しているのがすげえ。