情けなくて正当性のないことをオトナの名の元に高らかに主張する蓮丈がダメかっこよかったです。
 褒めようと思うと本編と同じ長さのいるタイプの作品で、ちゃちゃっとなんか言うのは難しいのだけれど。
 大人の論理と子供の論理のぶつかりあいから裸の王様状況を導出して子供の論理を勝利させる、まあ、常識的な作劇。うん、そりゃまあ、近親相姦で子供作んなくてもいいし女の子を幽閉したりもしなくていいよね。という意味では九鳳院一族って壮大な無意味をやらかしていて、その無意味になんだかんだで蓮丈が気付いている感じがとてもよかったです。息子バカだし奥さん怖いしなんかもうヤダって思ってるのに娘をぶんどりにきた男を前にするととりあえず俺いい服着てるから、と主張してみる。いい落としどころないかなあと思っていると娘に助けられる。いいとこカケラもないダメ親父ですが、基本善良なあたりとか、どうにも憎めない。
 特に息子の馬鹿っぷりはよかった。母親の言うことを鵜呑みにしちゃってる感じとか。父親って大変だよなあ。
 黒田崇矢岡本信彦はいい仕事をした。
 黒田崇矢黒田崇矢でどことなく青年ぽい未練がましさがよい。岡本信彦はどこか頼りない風情がたまらない。もっとしっかりした声だったらきっと真九郎には殴り勝っている。まあ、弟力、といっておこう、『sola』好きとして。誰か『おそ松くん』のEDと蓮丈の困ってるシーンでMAD作ってくれ。
 ところでライトノベル三大ロリコン小説、と原作は称されているらしいが紫と散鶴を除くと主人公と同い年かそれ以上の女性キャラクターしか登場しないおねーさん萌えアニメであることだなあと思ったよ。
 お姉さん声優陣では木村はるかがとてもよかった。少なくともこれでもう人に説明するときに困ることはあるまい。いやー、木村はるかって誰、みたいな話でさ、『バジリスク』のお胡夷っつっても『まなびストレート』の演劇部部長って言っても首傾げられる感じがさ、あったわけじゃないさ。
 ちょっと期待はずれだったのは升望。もうちょっと感情強く出してくれるのを期待していたのだが、そういう場面が回ってこなかった。珍しいアンニュイなキャラからどういつものに持っていくのか、と思ったらアンニュイなまま終わってしまった、というか。や、十分魅力的ではあったんだけど、期待が大きかっただけに。
 あとは植田佳奈の声は悪い意味で可愛すぎた。可愛いの自体はすごくいいことなはずなのだけれど、可愛げのない役柄に何故キャストされているのか、の疑問が最後までぬぐえなかった。監督が真田アサミがエロい人らしいので、その伝でいくと植田佳奈がかっこいい悪役、倉田雅世がしっとり落ち着いた女中頭、というのもわかる、気がしなくもない。すごく説明しにくいが。丸みある右声、がなんかオトナエロスと直結してるんだろうなあ、というか。植田佳奈の声の圧倒的な可愛さに対する感受性が低い、といってもいいのかなあ。まだまだ可愛さで勝負できる真田アサミを三十路エロスからだけ捉えちゃうとこみても。可愛さの方向性としてそれなりに似ている二人ではあるし。
 特定方向可愛さ感知能力、ね。声優受容理論上の重大な示唆が得られた気がするぜ。