小林立『咲』4巻

咲 Saki (4) (ヤングガンガンコミックス)

咲 Saki (4) (ヤングガンガンコミックス)

 ジャンルとしては怪漫なので、上手くなってしまうとどうだろう、という懸念があった『咲』ですが、中々どうしていまだにおかしい、ということはつまりそれは普通に良作なのではなかろうか。
 清澄・原村和と龍門渕・龍門渕透華、デジタル派の二人がぶつかり合う県大会決勝戦。デジタルを捨てて目立ちに行った透華の足を掬ったのは、鶴賀学園の東横桃子。生まれつき影が薄いので、リーチをしても振り込んでも気付かれないステルスモモだった。
 影が薄いのでリーチしても振り込んでも気付かれないステルスモモ! お前それもう『風の雀吾』の世界じゃねえか! もう麻雀関係ねえじゃねえか!
 実際身体半分消えてる地味にやりすぎな演出、その存在感の薄い自分を見つけてくれたゆみとのエピソードのいい話なんだかそうでないんだかわからないカオスっぷり。はい、茶番に回帰する残酷さですね。
 この漫画のなんだか凄みを感じさせるところは、このあまりに法外なステルス能力と和のデジタル打ちが現実的にどれほど異なっていようと作劇上はまったくの等価物としてしか扱われないあたりで、オカルトの極みステルスモモもデジタルの極み発熱和の前には通用しないのどっちすげー、であっさり流されちゃうところ。なんていうか、クレバーだよね、殆ど不必要なくらい。突っ込んだら破綻するラインの見切りが異様にシビア。純の流れコントロールをあっさり流してるあたりからしてすごかったんだけど、ますます。無論、破綻した理論に更なる大破綻を叩きつけて問答無用に押し切るパワーはないんだけれど、まああられても困るよね、この漫画で。引っ張りすぎないのは美徳。キャラが立ったらさっさと負けろ、の潔さ。
 あと、表紙登場に当たってキャプテンの胸が増量されているのも地味に怪奇。つかこの人のオッドアイも説明ないよね。ほんに説明しなけりゃ破綻しないだろ、の力技よ。
 そして風越最下位で猫口の池田が大将戦の初っ端どれだけまくってくれるのかも普通に楽しみ。咲が合宿を経て辿り着いた境地も。