スパイク・ジョーンズ監督『かいじゅうたちのいるところ』

 心安らぐ穴を現実が幾度となく踏み潰す映画。
 かまって欲しくて暴れてしまう少年、見栄で怒る母親の心根が見透かせてしまう寂しさ、それと知りつつ優しい嘘に乗るかいじゅうたちと、俺の好きなモチーフがてんこもりだったので普通に感動する。

さびしんぼな非コミュたちが痛みある現実に向き合う勇気を得るまで。

心安らぐ穴ぐらから追い立てられたり、穴ぐらが破壊されたらの描写が繰り返され、心が痛む。

 って当時の俺が言ってた。
 原作は児童文学研究のほうでは教訓のないアナーキーな異色作と目されているらしいのだけど、俺の読むところに拠れば普通に教訓的で、親に逆らって暴れてもどうせ楽しくないから素直になろう、そうすればお母さんがご飯を用意してくれる、というメッセージがビンビンにこめられている。絵の素晴らしさを除けばそれしかない、と言ってもいい絵本で、だからあんまり好きじゃなかったのだけれど、これだけ俺好みの方向で膨らませられるともう、なんというかありがとうございます。