診断名:ボクタチ

 俺たちの世代が単純反映論に過大なリアリティを感じてしまうのは、これはエヴァ本ブームのPTSDである、と俺正史*1には記されている。
 一ファンなのだから評論的な視座で楽しめばよさそうなものを一々編集者的な下衆の勘繰りを入れずにはおれない、よほど心底ほれ込んだ作品以外は貶すにしろ褒めるにしろオタクのなんたら或いは現代社会のなんたらを反映している事にしなければ落ち着けないというのはこれは明らかに異常な事態なのであり、それは作品に対し俯瞰的な視座が取れる知性を現すのではなく作品と商品/創作と受容その他諸々の区別がついていない知性の混濁を示すだけのものである。
 『エヴァ』に色んなものを根こそぎ持っていかれながら、それを語るための自分たちの言葉を探り出すよりも先に言説のセットを暴力的に押し付けられてしまった、という体験。言葉を失った俺たちに残されたのはちっぽけな自分たちのシャカイ生活だけだった。
 では、我々オタク第三世代はどうやれば豊かな批評的言説を紡ぐ事が出来るだろうか。
 声優批評、と俺が言い出さざるを得なかったのには、そういう問題意識もなくはない。不純でごめんなさい。
 第三世代オタクの批評的言説を細らせた三種の本、というものが俺正史には記載されている。一つ。謎本。二つ。エヴァ本。三つ。トンデモ本
 謎本的こじつけ設定考察、反エヴァ本的単純反映論、非トンデモ本的作者の意図への還元主義。細ったオタク言説の見本市だわ。

*1:くどいようだがいんあざわーず妄想