文学フリマ
 終了直前に行ってid:tenkyoinに頼まれた買い物だけする。
 id:deilluminationさんにご挨拶いただく。
 碌でも無い取り返しのつかなさにおいては『TO』の選択肢よりも『伝説』のAri80ウィザードの方が上だ、というようなお話をする。要は残酷なゲームと残酷な事が描いてあるゲーム、について。
 前日にはSF研で残酷な小説と残酷な事が描いてある小説という話をしたばかりだった俺。話題の使い回しとか最悪だよね。小説の方の事例は『ブライトライツ・ホーリーランド』と『され竜』でした。
 ゲームシステムであるとか語りの技術であるとかにおいて残酷なるコンセプトを達成している『伝説』『BH』はただ残酷な事をシステムの上に乗っけるフレーバーとしてのみ描いている『TO』『され竜』よりもすごい、というような話なのだが、『BH』と『され竜』じゃ格が違いすぎる、という批判をみんなに受けたよ。
 さておき。
 このような凄味は不注意なプレイヤー/読者には通用しない、という言い方は多分成立し、そしてどんなプレイヤー/読者であっても不注意になってしまう瞬間がありえる以上、凄味に欠けるフレーバー頼りメソッドは案外捨てたもんじゃなかったりするわけで、そしてプレイヤー/読者が殊更に不注意になりがちなのはなんといってもエロ局面*1なのであって、それがエロゲーがエロCG+エロテキストによってエロい事を描く(だけの)方向に収斂して行った理由なんだと思うます。『蒼き狼と白き牝鹿』のオルドで抜けってのもさ、ほら、ね。
 そもそもエロという根源的なコンセプトの部分でフレーバー頼りな成り立ちをしている事がシステム軽視的な方向へその後エロゲが進化していく動因としてあったんじゃないか、といったおもいつき。
 その後、id:sayumeさんとLD漁り。ザ・コンでプリンターの価格調査をしていると、id:cherry-3d君から電話が入り、id:mae-9探偵小説研究会の人々でお茶してるから来い、と呼び出される。で、id:tsurubaさん、id:endingさん、田中博さん、羽住典子さんに引き合わされる。初期富士見ファンタジア受賞者のレベルの高さは異常、とかそんな話をした。
 小林めぐみ星野亮がSFコンテスト投稿者だったという事実は、コンテストの廃止とライトノベルの盛り上がりには多分因果関係があるんじゃないか、と想像させるに十分だよね。
 乱歩賞はオヤジ小説の新人賞でファンタジーノベル大賞はブンガクな新人賞だった事実を鑑みるに、若者向けエンターテインメントの新人賞はSFコンテストしかなくて、でもってそのコンテストが廃止された丁度のタイミングでファンタジア小説大賞が設立された、という、これはきっとタイミングの偶然なんだろうなあ、とか。
 というような事を考えるとライトノベルの源泉を綾辻行人に求めるような議論には微妙に不信感を抱かざるを得ません。「京極夏彦講談社ノベルスを知り、森博嗣清涼院流水メフィスト賞を知った。」(『クリスマス・テロル』)という佐藤友哉の記述は世代的な感覚として実によく分かる。京極以前はリアルタイムの娯楽としては俺たちの世代には存在しなかった。
 面白えんだよ、『スレイヤーズ』って特集を来年の文フリではいかがか>id:cherry-3d
 散会後、id:sayumeさんと二人で和幸で飯。話が盛り上がってジョナサンに河岸を変えてまで話しまくる。
 話題は色々多岐に渡ったが、これはってのを挙げておくと西尾維新
 『クビ〜』三部作は、意図としては恐らくミステリのある側面に対するファックである、という話。ネタバレ反転。クビキリサイクル』の三つ子は入れ替わってるんだけど、その入れ替わりはまるで意味がない、とか。双子の入れ替わりとは二人一役や一人二役によってどちらかが行動の自由を得る事で成立するものなんだけれど、そういうのはまるでない。ただ入れ替わるだけ。その入れ替わる時点も、彼女らの行動が詳述されていない以上、全然自由であって、しかも殺人事件の解決に一切関与しない。二作目の早業殺人は、ノー検証だ。できそうにないけれど実はできる、という証明が肝になるべきなのに。これらは、推理不可能なトリックであるとまずは言えて、それをあえて混ぜ込んでくるのはこういうのがあればホンカク、みたいでよいんでしょ? というファックだ。で、『クビツリハイスクール』は萌えキャラが/を殺す事への徹底化で、これは実は語り手が魅力的だと言った異性は高確率で犯人か被害者、という、ミステリのある種のパターンに対する揶揄としてまずは読まれるべきだ。萌えカルチャー批判として読むと恐らくは誤る、のは、ミステリへのファックを取り下げ、萌え小説化した『サイコロジカル』以降の展開は実はそんなにどの方向へもファッキンではないのを見れば明らかだ。
 さておき、キャラ萌え小説としての西尾維新てのと、女子にばっか売れているという事実をどうマッチングさせたらいいのかとid:sayumeさんに聞かれましたよ。
 無論、俺はみんな『クビシメ』を読んでは「私のいー様に近づくなんて巫女子はクソビッチよ! 死んで当然だわ!」と思っていて欲しいです、と断言してきました。
 文フリ参加者らしくはてダIDで呼び合ってみましたが、何か。

*1:て『オークションハウス』で小池せンせが言ってた。