隆慶一郎『柳生刺客状』

柳生刺客状 (講談社文庫)

柳生刺客状 (講談社文庫)

 涼元センセの新刊を本屋で見かけた瞬間「すべて真言坊主が悪い」なる珍フレーズが脳裏を過ぎったので、読んでおかねばと併せて購入し、真っ先に読了。
 比較的、超絶技巧の短編集。素直に唸らされます。
柳生刺客状」……家康/秀忠、石舟斎/宗矩、新次郎/兵助の三組の親子のありようが、結城秀康暗殺の戦場に結実する、プロットワークの冴えは流石の一語。序ノ段の異風な文体も味わい深い。えー、宗矩と秀忠があまりに運命の出会い。不幸な父子関係に呻吟する二つの孤独な魂が、がっちりと組み合わさってとんでもない方向へ、という、まあ、柳生とかさておいてカタルシスなお話。
「張りの吉原」……アナルセックスばんじゃーい、ばんじゃーい! えー。首代たちは自由に生きているので、女性は差別されてもかまわない、あまりにもFな隆慶先生がここに。
「狼の眼」……普通といえば普通の時代小説。
「銚子湊慕情」……あっべー。面白そう。一々みんなキャラ立ちすぎ。
死出の雪」……「すべて女が悪い」で御馴染み。悪い女はあんまり出てこないが、実は。破滅へ突き進む男たちの姿を淡々と描き出す、幾分ハードボイルドな味わいの短編。