今更ながら。
http://d.hatena.ne.jp/AKIYOSHI/20070530#p1
 この記事の存在は前々から知っていたんだけど、俺の中で何かが熟したので、書く。

私が聞いた話では、選考委員会が議論したのは第二群(功労賞以下)だけで、第一群は、後述する事情を除いて投票結果の通りであったという。新人の定義で議論があったが、第一回ということで、投票者の意向を尊重してそのまま授賞したという。また、その結果も、かなりのレースでダンゴ状態で、同様にせっかくだからという理由で、主演以外は複数名の受賞となったそうである。

 という、声優アワードのあまりにあまりな内情*1についての告発である。

実は、この同じ日にはパシフィコ横浜で「ネギま!? Princess Festival」が開催されており、そこに出演する声優31名が参加できない状況下にあったのである。この中の何人かは投票で上位にあった人物もいたようで、「恣意的な選考」が取り沙汰されると言えばその点のみである。

 と、簡単に流されているが、ここでパージされた面々の総得票は、殊に主演女優部門では無視できぬものだったのではあるまいか。

 主だったところではこの五人。誰が受賞しても、朴ロ美*2よりはずっと説得力がある。
 能登麻美子堀江由衣などは、大本命の中の大本命*3と言っていいはずで、このような重要な声優をパージして「その年度に最も印象に残る活躍をした声優を対象に、その業績を称え」ようとはちゃんちゃらおかしい、と言うほかない。
 そもそも。
 「恣意的な選考」は排除されるべきだっただろうか。
 答えは断じて否である。
 選考委員――いまだその姓名すら明らかになっていない選考委員は、人気投票に結局は過ぎない*4一次選考の結果には決然として背を向け、己が信じるよりよき声優とは何か、を選評を通じて明らかにすべきであっただろう。
 今声優アワードを創設する意味とは、この目の前にある声優シーンをひとつの文化へと鍛え上げていく――声優批評への道を切り開くことではなかったのか。
 なのに、そのような文化史的意義を放棄して、選考委員はヴェテランの誰を殿堂に入れるかばかり専ら話し合った、という。
 これは若い声優の人気を利用して、年寄りの声優を持ち上げる以外のことに選考委員が興味を持っていないことを意味する。眼前の現象に対する、ある真摯なものを期待した我々若い者の期待は、無残にも裏切られた。
 これほどファンを、そして声優をバカにした話もない。若い声優には、人気以外に評価されるべき点はない、と宣言したも同然なのだから。
 そして無論、若い声優の人気を搾取した功労賞に対する選評も明らかにはされていないのだ*5
 いいだろう、若い声優はみな未熟で、我々若い声優のファンはリテラシーを欠いているから彼ら彼女らになにかよきものがあるかのごとく思い込んでいるだけ、それでいい。
 ならば、例えば功労賞の池田昌子が功労賞から漏れた野沢雅子に対して決定的に優れている部分を、お偉い選考委員の皆様には是非ご教授願いたいものだ。そのような、いわば教育的配慮あらばこそ、受け手側の声優文化は成熟していくのではあるまいか。
 声優アワード実行委員会には猛省を促したい*6

*1:「これらの会社が推したい人物に華を持たせた」とは、発表当初から俺は思わなかった。集英社作品である『NANA』の朴ロ美が主演女優賞を獲得して、角川書店小学館になんの得があるだろうか、例えば。この伝で行けば一番怪しいのは小プロ作品で実行委員長がプロデューサーもつとめた『ポケットモンスター』のシナジー賞であろう。

*2:ところで、彼女が『ネギま!?』の出演声優がパージされていたとしても一次選考で首位を獲った、というのは中々に興味深い話ではある。男性声優と朴、精々が斎賀みつき以外にファミリアな感情を抱いていないファン層、BLCDを買い支えている――そして恐らくは『NANA』の視聴者ともある程度重なる――女性ファンのボリュームが、その存在感にも関わらずノミネートにも残らなかった豊口めぐみ中原麻衣ならいざ知らず、川澄綾子平野綾あたりを蹴散らすほどに大きい、ということを示してはいるのだから。無論、パージされた五人に豊口・中原・川澄・平野その他――桑島法子釘宮理恵などのノミネート残り組――あたりで男性ファンの票が割れたため、女性ファンの票が恐らくはかなり一極的に集中しただろう朴に押し切られた、という面はあるだろう。

*3:現にノミネートはされている。

*4:だから、能登・堀江不在の状況下で朴を上回る票数を獲得できなかった川澄や平野が意外と人気者ではなかった、ということは、勿論言えるだろう。

*5:シナジー賞のみ、選評らしきものが公式サイトに掲載されている。http://www.seiyuawards.jp/finish.html「1997年4月に放送開始された「ポケットモンスター」のアニメーションは、今年10周年を迎えます。映画における過去9作品の累計興行成績は414億円という驚異的な数字を記録。また国外でも高い評価を受け、テレビシリーズは68カ国+2地域で放送されています。(06年5月現在)。日本のアニメーション史を変えるきっかけとなったこの作品、そして支え続けてきた声優陣に、第一回のシナジー賞を贈ります。」商業的なインパクト、それも声なしの原作ゲームの人気に支えられたそれが授賞理由だというのである。巨大な収益を支える海外版ではポケモン以外は吹きかえられているのはどうでもいいらしい。なんともあまりに商業的な視点。売り上げ一元主義に抗するべき文化賞を設立する意義を、実行委員会・選考委員は本当に理解しているのだろうか。

*6:そもそも、賞の運営自体に大きな疑問がある。新人部門を中心に、受賞資格の有無が非常に曖昧だった。事前に各部門の対象となる声優をリストアップするくらいの労は惜しまないで欲しいところ。中間発表・ノミネート発表では明らかに新人ではない声優が新人部門に何人もランクインしていた。これらの声優を排除した結果、柿原徹也鹿野優以が上位に浮上したのであろう。この二人が去年の新人として評価されることはさまでに不当ではないが、であっても中間発表・ノミネートの時点で杉田智和福山潤への票は無効票として弾く、くらい、このような投票を行う以上常識的に行っておくべきなのではあるまいか。