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イアン・ワトスン、この名前の響きを聞いて甘美な感覚にとらわれる海外SFファンも多いだろう。今月、かの伝説の短編集『スロー・バード』が復刊された。

 あら。チェックしてなかったわ。
 ガチで名作なのでSFファンの若い子はこの機に買っておくと良いんじゃないかしら。
 ところで『オルガスマシン』は非常に微妙としても*1『エンベディング』以降の邦訳のある長編に関して言えば、ワトスンの技巧はある意味完璧。『マーシャン・インカ』とか、視点ひとつにして倍の分量にしたら『クリスタル・サイレンス』くらいにわかりやすい話にはできると思うんだけど、あえてそうしなかったのではないか、そのことであのインパクトも生まれているのではないか、という視点はありうるわけです。
 ワトスンの人物描写って記述自体はコンパクトだけど変に生々しかったりも実はするし、この人小説上手いんじゃねえかな、という疑いをたまに持たされるんだけど、その疑いが事実である、と教えてくれるのがこの短編集だと思っています。「ジョーンの世界」とか典型。あと「バビロンの記憶」なんかは似たようなアイデアのロジャー・ゼラズニィ『ロードマークス』よりもよっぽどよくまとまっている。
 まあ、短編をまとめる技巧と長編を展開する技巧って正反対の部分あるからなあ。

*1:習作、とやはり言わざるを得ない気はする。多視点何がなんだか技法をまだ導入してないし。反対に言うと、『オルガスマシン』も全編の主人公を散らしてあれらのエピソードを並行的に配置してもうひと捻りしてたらもっと楽しかった、と思う。