高野秀行『怪魚ウモッカ格闘記』

怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道 (集英社文庫)

怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道 (集英社文庫)

 UMAファンにはおなじみのサイト「謎の巨大生物UMA」で話題になった怪魚ウモッカを、あの高野秀行が追う、という、すさまじく狭い界隈にはすさまじくツボな一冊。
 といいつつ、高野秀行はちゃんと読んでいなかったのだけれど。
 不明を恥じるぜ。
 四十路が目前に迫った探険家の老いへの恐れ、探検前の昂揚と不安、そして探検が不首尾(まあそりゃニュースになってないんだから不首尾だったのは自明よね。そういうことを読む本ではない。)に終わった時のどうしようもない気持ち。
 かつてなかった、このような状況におかれた人間についての誠実で真摯で、なおかつ文芸的・文体的なテクスト。
 いまだ名づけられぬものが、ここには渦巻きまくっている。渦巻きまくったまま、掬い上げられている。
 これは現代人必読の書でしょう。
 個人的には、さくだいおう氏が今不老不死を研究している、というのがツボでした。