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STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2008年 02月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: INFASパブリケーションズ
- 発売日: 2008/01/04
- メディア: 雑誌
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更科節が満喫できる良い特集でした。
ひとつ。
『ONE PIECE』の扱いについて。
『ONE PIECE』を「友情・努力・勝利」への単純な回帰とみなしておくのは、まあ議論の簡便さを考えれば頷けるところなのだけれど、『ONE PIECE』とジャンプ黄金期漫画――例えば『魁! 男塾』とか――が、テーマ論としては「友情・努力・勝利」を描いているのだとしても、そのありようは随分違う。
黄金期ジャンプにおいて、「友情・努力・勝利」の実態とは、まずもって、バトデレ展開のことだったといっていい。
バトデレとは俺が今作った言葉で、バトルのあと、それまで敵だった相手が仲間になる、まあ、撲針愚後にJ、驚邏大四凶殺後に関東豪学連、大威震八連制覇後に三号生、天挑五輪大武會後にファラオたちが桃たちの仲間に加わったようなあの展開をゆいます。勝利と友情を一体化し、随所に努力をさしはさんでいく、友情・努力・勝利を充足させる、まずは非常に洗練された方法であったとは言えるでしょう。
『アストロ球団』もそうだし『聖闘士星矢』もそうだし『キン肉マン』も『るろうに剣心』も『ダイの大冒険』も『幽遊白書』も『ドラゴンボール』も採用したこの展開を、『ONE PIECE』は基本的に採用していない。『幽白』『DB』あたりで微妙に飽きられたっぽかったから。
同時に、『ONE PIECE』はバトルを望む読者の欲望を背負って友情と勝利を手に入れていくバトルマニア主人公も排除している。
ルフィの目的は「海賊王」であり、強い奴と戦うことではない。『ONE PIECE』では、戦いは目的ではなく、あくまで目的達成のための手段にとどまる。ゾロはまあ、戦いそのものを求めるキャラではあるのだけれど。
バトルマニアでない主人公がバトデレ有理でないセカイで目的のために戦いを辞さずにがんばる、というのは、ところで実のところ「マガジン」の理法だ。
『金田一少年の事件簿』の犯人たちは仲間にはならないし、『特攻の拓』の武丸サンはいつまでたっても怖い。花形満は星飛雄馬のチームメイトにはならない。というか、リアルなプロスポーツモノでは当然バトデレ展開は排除されるし友達だけど敵、という関係もありふれたものになるはず。そして「マガジン」はプロスポーツモノが伝統的に強い雑誌ではなかったか。
「マガジン」から「ジャンプ」が首位を奪い返す原動力に『ONE PIECE』がなりえたのは、この「マガジン」ぽさも一つの原因ではなかったか。
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バトルマニア主人公はバトルを望む読者の欲望の代行者なのだ、と乱暴に言ってしまうとすると、『ONE PIECE』の成功の背景には読者層、子供たちのバトルに対する欲求の低下がある、ともいえるが、まあ乱暴すぎるわなあ。