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 んーと。
 まず『紅』50万部の件。
 その筋では、これは『電波的な彼女』との合計7冊の総発行部数ではないか、と言われています。だって応募券『電波的〜』にもついてるし。そうすると単巻約7万部。
 雑誌では公称部数は実数の3倍といいますが、小説の場合部数水増しの必要はそんなにはないので、まあ実数に近いんじゃないかと思われます。
 で。
http://kaoriha.org/rating/Author.aspx?authorId=1007
 このデータを見るに、アニメ化決定とアニメ放映開始の効果で『紅』がベストセラーリスト入りしたのはまあほぼ確実と言っていいところです。ベストセラーリストに入るか入らないかは大体10万部が境界線*1。『醜悪祭・上』はギリギリランクイン、『醜悪祭・下』は一気に2位。直上の『彩雲国』は各巻25万部で翌週もトップなので、まあこれよりは少なく前巻よりは多い部数は刷っているのだろう、と思われます。
 となると、この2冊がそれぞれ10万部・15万部でそこまでの5冊は各巻5万部、アニメ化に併せて1万部ずつくらいは増刷してるだろうから4万部ずつくらい、というのが推測されるアニメ化の報が出る前の部数のラインではないでしょうか。
 各巻4万部なら、そんなに驚くような部数ではありません。
 アニメ化後の各巻15万部もなくはない数字です。
 驚異的な大ヒット作、とまでは言えないでしょう。

 で。

少なくとも印税については本来一冊分のところを三倍とは行かなくても何割増し、多分高確率で10割増しを超える分は受け取っているし、コミカライズの原作分だって入ってくる。
 これは編集部としても同様。ファンブックも原作ファンからは非難GOGOでも声優ファンから見れば余計な物がないよいものだし。

 これは上下巻で完結させず、完結編をファンブックに載せたこととはまったく関係のない話では。
 恐らくファンブックの印税は一冊まるまる分の著者印税ではありません。原作料+10何ページ分の印税だと思われます。そして、これは『醜悪祭』が上下で完結しようがしまいが入ってきたお金です。完結編掲載*2の情報で部数にどれだけ上乗せがあったのかはわかりませんが、醜悪商法の成果として考えられねばならないのはまさにその上乗せ分だけです。
 反対に、作品をきちんと完成させられるという信頼が失われたことによる、書き下ろし目当てで買ってくれるはずだった原作読者のファンブック買い控えも起こっているはずで、この買い控え分と上乗せ分、どちらがより大きいのかはよくわかりません。ただ、真っ正直な商売と外道な商売でどっちが儲かるかわからないとき、前者を選ばない人は普通いないと思います。
 別の角度から。
 作者の具体的な損失について言うのならば、きちんと完結している下巻、上巻と同じ厚さ=値段の本が出せていれば、(550−500)円×0.1×15万=75万円さらに儲かっていたはずなのです。アニメの資料を載せた分印税が減額されていたりしたらもっとですね。
 これは出版社側でも同じ話。本の原価率を8割とすると、(550−500)円×15万×0.8=600万円の売り上げを失っているわけです。その上アニメの資料を載せたことで製作委員会への支払いもこちらには確実に発生しているはずで、かなり分の悪い商売になってしまっている。
 で、この損失をファンブックで埋め合わせるには、600万/(500円×0.8)=1万5千部の上乗せが必要なわけで。
 完結編掲載の情報でファンブックの売り上げが1万5千部伸びた、というのはちょっと考えにくい数字です。買い控えも起こっているはずなので。
 真っ当な商売をやっていたほうが儲かっていたし、信頼も失わないで済んだのに、次からさらに外道な方向に突き進もうとする人はやっぱりとても珍しいと思います。
 というか

アキカンの放映時、「三冊同時刊行、ただし厚さは通常の三分の一」

はさておき

「完結編が読みたいならDVD全巻買ってね(はあと)」

 なんてのは、どう考えたってやっぱり割に合わないわけですよ。
 『アキカン!』のDVDが原価1巻3000円各巻5000枚全6巻として、製作委員会の収入が9千万。完結編がまるまる文庫本1冊として、『アキカン!』はこのとき各巻8万部と仮定すると、8万×500円×0.8=3200万円。出資率35%以上じゃないと引き合わない計算です。回収も遅れるし、作家のスケジュールも逼迫するし、いいことはあまりない。30ページくらいの短編冊子で完結編のケースでも、以降のシリーズ展開が束縛を受けるのであまり嬉しくはない。
 てか、おっしゃる通り『紅』はかなり気合の入ったメディアミックス展開をしているのです。KSSの原作者に無理させるくらいに。一方の『アキカン!』に関しては、コミカライズもまだだし、アニメ化の報が流れたのにベストセラーリストにも上がってこないわけで、まあ、気合の入り方もそれ相応なのだろうと推測されます。
 これまでのSD文庫作品のアニメ化って松尾衡ブレインズベースみたいな強力なライン抑えたことなかったし、『はっぴぃセブン』の時くらいの空気アニメが一本できて終わるのではないか、と予想されます。『はっぴぃセブン』、好きだったけどね。ヒットはしなかった。
 それくらいの作品のために、無茶はできません。
 無茶する価値のある作品と、作者のKSSが奇跡的にバッティングしてしまったことで起こった、かなり例外的な事態だと思います。
 あと。

『紅 公式ファンブック』
手前みそですが、おもしろい。五月雨荘自治会よくやった。原作の小説と、SQ.のマンガ、アニメの違い、共通性、それぞれの秘密(?)が満載。片山憲太郎書きおろしの短編小説『祭の後』も絶品でした。醜悪祭(下)のあとでどうなったかが「なるほど、そうだったのか!」とジーンと来ました。

http://dash.shueisha.co.jp/editor/
 これ、なんにも嘘はついてないですよね。
 これをもって良心の欠如を主張するのは何かが違うかと。

*1:http://lightnovel.g.hatena.ne.jp/REV/20080228/p2との比較による概算。

*2:編集部サイドは一貫して後日談、書き下ろし小説としか言っていないわけだけれど。