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 んーと。
 なんだか醜悪商法のリスクリターンの評価が根本的にあれげな気がします。
 まず、小説の文庫本ではページ単価はそんなに考慮しなくていい数字です。編集費は固定給、デザイン費は口絵・扉くらいにしか発生しない、DTP費と紙代と印刷費と輸送費は変わってきますが、分厚い本はより高く売れるわけで、やはりそこまで経営を圧迫する要因にはならないでしょう。
 で。
 DVDと『醜悪祭(下)』と公式ファンブックの売り上げだけで醜悪商法の成否は計れません。信頼の低下はもっと長期的に利いてくるはずであって、つまり『紅』の次巻以降*1の売り上げを見なければならないはずです。そのデータもなしに今ひとたび醜悪商法に出る勇気をSD文庫編集部はどこから搾り出すのでしょうか? 2週目にベストセラーリストでの順位をがくっと落としているあたり、悪影響が出ているようにも見えます。発売初日売り抜けが常態化しており未完成騒ぎの絶えないエロゲーとは違い、書籍は発売後の評判も売り上げにがっつり響きます。
 それから、DVD全巻購入特典に完結編という商法に関して言えば、どの時点で発売された原作の完結編を特典にするのでしょうか?
 放映開始あわせ? それだとDVDリリースが終わるまで*2原作の続巻が出せないことになります。出してもいいですが、続巻が出てしまったら完結編の存在価値は非常に微妙なことになってしまいます。完結編を読まなくても話がわかるようにすると完結編を求める読者のモチベーションは下がりますし、完結編なしでは話がつながらないようにすると、続巻から脱落する読者が増えるのは必定です。
 最終巻リリースあわせ? まだ出てもいない原作の先のほうの巻の完結編を読みたいから、とDVDの一巻を予約するお客さんが多かろうとは思えません。製作委員会・ビデオメーカーとしてはDVDはなるべく予約した上でリリース直後に買ってほしい。DVD一巻の販促としては半年後に出る予定の原作の完結編、という特典は明後日に過ぎます。
 公式ファンブック、せいぜいがDVD一巻に完結編がついてくる、よりも阿漕なことはやろうったって中々できるものではありません。それだってまっとうにやったほうが儲かるし信用も失わないですむ、というのは先述のとおり。
 醜悪商法の実態を狩田さんは本来一冊の本を三分割して販売したこととお考えのようですが、これも疑問です。上下巻ならば一巻完結の本よりも一冊あたりのページ数が薄くなるのはよくあることです。そして『醜悪祭(上)』のページ数は上下分冊の一冊としては十分。やはり、問題の本質は下巻で完結しなかったこと、完結編をファンブックに載せたことにあるのではないでしょうか。
 本を分割した、という意味では一冊を二冊に分けただけです。正確には、ファンブックの完結編をあわせても『醜悪祭(下)』は一冊分の分量に満たないわけですが。
 この分量不足と分割掲載は、いずれも作家のKSSに由来するものであり、商法とは呼びがたい、というのは先述の通りです。
 別の視点。
 原作とアニメの両方を扱うファンブックに掲載されたりDVD特典になったりする書下ろし小説は、原作ファンに対する購買の動機付けのみならずアニメ版のファンを原作に誘導する効果も期待されているはずです。
 そこまでの原作を読んでいなければ何がなんだかわからず、完結編である以上ネタバレを多いに含むエピローグを掲載する形式は、このような誘導効果がほぼ考えられないという点で下策です。
 やっぱり、どう考えても普通にやるのが一番。次なる醜悪商法への懸念は杞憂だと思います。まあ藍上陸先生がアニメ放映直前にKSSになれば話は別ですが。

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プレスコという方式である以上大量に生まれる未収録シーン

 生まれないです。
 プレスコってのは要は絵コンテのタイミングの指示を声優さんたちの芝居を収録したあとでその芝居にあわせて書き込み、そこから作画INする手法です。プレスコ前に作画INして声優がどんな間を取ってきてもいいように長大な尺のシークエンスを作っておく手法ではありません、というか作画INが収録に先立つんなら”プレ”スコではないです。

原作物の場合はその代わりに一定期間の原作の売り上げを何割か流すという契約になっている可能性が高いんで、そうなると少々売り上げが鈍ったくらいならばむしろ集英社側としてはありがたい

 こういう話も聞いたことないです。
 原作はあくまで原作、アニメの派生作品ではありませんので、製作委員会にフィーを払う必要は普通ありません。出版社が製作委員会に原作権の一部を割譲する契約でもしてたら別だけれど、そういう契約をしなければならない事情ってのはちと思いつきません。制作費が現金で払えないから、なんて経営状態ならアニメ作るより先に色々やることがあると思います。
 基本的には、アニメの絵を使うかマルシーに製作委員会が入ってるかしているものに関しては製作委員会にフィーを払わねばならない。そうでなければ、払わなくていい。

原作側が勝手にコケて利益を一方的に持っていくのを防ぐ為の縛りがあるとするのが妥当だろう。
 例えば期間内に原作を2本出してガイドブックには書き下ろし、みたいな契約になっていればそれが醜悪祭商法の原因とはなりうるだろうし、それに売り上げそのものについてもある程度行かなかったら何らかのペナルティが発生する可能性はある

 こういう契約も聞いたことないです。
 製作委員会と原作は基本的には関係ないので、ペナルティもクソもない、というのは先述の通りです。

*1:それが出せればの話ですが……。

*2:ほぼ一年。