押井守監督『スカイ・クロラ』

 新宿バルト9にて。
 『ポニョ』の毒気に当てられてしまったので、デトックスしたい、と思って見に行きました。
 その目的は十分達せられたのでいいっちゃいいのだけれど。
 押井守という人は本当に不器用なんだなあと思いました。本人はドラスティックに作風を変えたつもりなのだろうけど、傍から見るとあまり変わっていない。引用が少ない、アクションシーンが多い、それくらい。引用を減らしてアクションシーンを増やしたことでこれまでの押井映画から何かが変質したかというとあまりそうとは思えない。例えばやたらな正面構図の多用とか、人物の前に小道具入れてみたりとか、そういう画面の作り方はまったく変わらないし、そういう部分が映画の最終的な、そして最初の印象を決める、ということは押井守はわかっているはずだし、そこをどうにかしたい気持ちもなくはないのだろうけれど、結局どうにもできていないのはどう考えればいいのか。
 いや、押井守は好きなので、いつもの押井であるこの作品を個人的には歓迎するのですか。
 声優に関しては、まわりのいつものメンツっぷり*1には多少苦笑を禁じえないが、主演の二人のヘンな声と芝居にはなるほどこれしかないだろうという世界があったとは思うので、まあ失敗ではないキャスティングだと思った。ただ、若手声優には演じられないような複雑な役柄とも思えなかった。適当な若手声優をつれてくれば、人物像を大きくは崩さない範囲でまた別のバランスで作品は成立しただろうと思う。なお、谷原章介栗山千明は普通に声優臭い声と芝居だった。
 すたぶ。

*1:脇のさらに脇に水沢史絵と渡辺智美がいるのはちと気にかかる。若林和弘のお気に入り枠か。