とらドラ!

 主演声優が発表されただけでここまでの阿鼻叫喚の嵐になったアニメというのは稀有だと思うのだけれど、そして先週の『スレイヤーズ』のあとののCMがあまりに『ゼロの使い魔』そのままで誰もが落胆したのだけれど、本放送が始まってみればそれほどヒドくはなかった。
 ルイズというよりはシャナ、ルイズというよりは神楽という線の、適当なツンデレではない釘宮理恵なりの逢坂大河がきちんと構築されていて、当たり前のことではあるけれど安心した。
 適度に見捨てられた子供のようで、適度に誇り高い戦士の声。
 釘宮理恵ツンデレの枠にはめられてつまらない演技しか出来なくなっているなどという世評が嘘であることを見事に証明していると思うが、しかしであっても自ずから限界はあって、神がかった美少女としてのリアリティは当然ない。感情の乗った強い一発もないんだけどそれはまあまだ問われる局面ではないのでこの作品での評価としては擱く。
 天上的なリアリティの否定というのは多分このアニメ版のコンセプトでもあって、大原さやかがかなり芯のある声を使ってきているあたり、なるほど一工夫あるなあと思う。独身に田中理恵というのもそういうことだと思う。あまり普段と変わり映えするようでもないが。
 この路線での白眉は恐らく間島淳司の竜児であって、包容力はあるが高校生並み、というラインを見事に体現している。
 ここに堀江由衣野中藍、という天上の住人コンビはかみ合うのだろうか、という疑問があって。藍ぽんの声は相変わらずとても可愛いのだが、可愛すぎてこの段階での麻耶としては存在感がありすぎる、悪目立ちしてしまっているように思える。ほっちゃんは十分に天使であることによってのみ支えられる堕天のリアルが欲しいのだろうがそれは求めて得られるのか、アホなことを十分にいいテンポで言えるのか。不安ではある。裏切ってくれると信じているが。
 声優の話だけか。
 声優の話だけだ。

 あ、シリーズ構成はとてもよいと思います。
 『とらドラ!』1巻前半てアニメの一話ならここまでってポイントはいくつかあるんだけど、その中から「竜児が大河とであって襲われた」でも「竜児が大河とであって互いの恋に協力し合おうと誓った」でもなく「竜児が大河と出会って家事全般の面倒を見ることになった」を選び出したのは非常に正しい作品理解だと思った。
 あと、色々細々と結構大胆に変えていて、例えば大河と竜児の初めての出会いでは原作では竜児は大河のオーラにビビるだけなのだが、アニメでは大河に殴られる。最近のやたらによく殴りあう原作の展開をかんがみれば、これもありうるアレンジ。
 キモいのはインコちゃんの寝顔、という部分は恐らく普通にはずしていい。