庵野秀明総監督『ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破』

 おいそこの「『ヱヴァ』? まあそのなんていうか、若気のいたりで『エヴァンゲリオン』にはハマったけど、まあ、あの作品にはあの作品なりの、なんていうの、90年代的? 同時代性みたいなのがあって、その歴史的役割的なもの的なところに反応した当時のボクのセンスはまあそれなりにシャープだったかな、なんて思わなくもないけれど、今更、ねえ。もう役割は終えたでしょって感じ。まあ、庵野さんも結婚して、コドモもとうかなみたいに思ったら不安になったってことかな(笑)。パチンコマネーで『エヴァ』の映画ね。生きるって辛いよね(笑)。見に行かないのかって? 一応アニメ好きで通しているボクが? なんかあえて見に行きませんでしたー、ていうのもさ、引きずってるみたいでカッコ悪いよね? まあだから、キミがどうしてもっていうんなら付き合わないでもないけど?」とかゆってる奴!
 いいからスタジオカラーにジャンピング土下座して今すぐ劇場へ行け。
 この十年、『エヴァ』より新しいアニメがあったかどうかは知らないが、エヴァンゲリオンほどかっこいいロボットはついぞなかったのだ、ということを再確認させられる、超弩級のロボットアクションアニメ。
 すげえもんを見てしまった。
 帰りの電車、向かいの席にはディズニーランドの袋をもって、遊びつかれた様子で眠りこけている一家がいたのだけれど、俺はお前たちよりも充実した時間を今日過ごしてきたのだぞとなんだか妙に誇らしい気持ちになった。
 アニメファンやっててよかった。
 以下バレ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『エヴァンゲリオン』というのは、色々な角度から見て、どうにもしゃらくさいアニメでした。『エヴァンゲリオン』を語るとは、どのしゃらくささが最も耐え難かったかを語り合うことにほかなりません。アスカがメンヘるのとか綾波が自爆するのとか、これみよがしな悲劇で辟易します。一話でケリつかないのがめどいです。三石琴乃に大人の女! とか、だってもう20代後半なんだからそういうこともあるだろ自慢げなのがやです。
 そういうしゃらくさい方向へ行くんじゃないかな、行くんじゃないかなという不安を散々煽ってくれるんだけど、そっちへは結局行かないので後味が大変に爽快。
 例えばゼルエルさん。
 ゼルエルさんが真希波弐号機に苦戦してるところでもうアタマん中は『修羅の門』ですよ羽山アリオス戦ですよ。ああ、ゼルエルさんが真希波のカマセにされちゃう! ゼルエルさんは最強の使徒じゃなくちゃダメなのに! と思うと、真希波が結局はアリオス戦のムガビかイグナシオ戦のラモンくらいのところに落ち着いてくれるわけです。よかったよかった、とほっと胸をなでおろします。
 死亡フラグをこれでもかと立てまくった挙句参号機で暴走したアスカの生存も結構早い段階で示唆されるし、なんといっても二人目のレイが助かるところなどしゃらくさくないエンタメとして正しすぎる。
 シンジがレイにひたすら手を伸ばすラストシーンは『ウテナ』っぽい、と少し思った。