京田知己総監督『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』

 TV版を素材に、こうすれば面白くなったんじゃないかなあ、というオルタナティブを提示しておお、なるほど確かに、と思わせてくれる映画。思わされた直後にじゃあ最初からそうしろよ、とは言わないのが情けというものだろうか。
 テクノとサーフィンのネタはいらないのでざっくり削る、ニルヴァーシュと通じ合っているのをエウレカではなくレントンにする、ニルヴァーシュに人格があることを序盤から強調していく。TV版がいかにいらないものはいっぱい入っていたのにいりそうなものがなかったのかが分かるアレンジであり、鋭い批評精神の表れだが何故それが事前にできなかったのかと思う。
 今回のエウレカは幼馴染なので序盤からエモエモと叫びまくり。名塚佳織牧野由依ではないのでこっちのほうが生きると思いました。ただ、性的虐待のニュアンスを漂わせすぎるのはどうなんでしょう。格納庫のシーンとか何かあったとしか思えないじゃん。興奮するけど。あと無闇にケツとモモを強調するカットが多かった。
 全体として、TV版の退屈なお上品さをかなぐり捨て、下品で扇情的な、つまりエヴァっぽい方向に舵が切られているように感じました。敵のオーガニックな柔らかさを強調した殺し方をしてみたり、敵KLFの上体を力づくで引き裂いたりとか、TV版には持ち込まれなかった、村木サーカス以外の外連味が積極的に用いられているあたりもエヴァっぽい。
 だからTV版のとかく退屈村木サーカスもすごいけど飽きるよ、という欠点は見事に解消されていて、演出家脚本らしいぎこちないダイアログとか気になったけど2時間退屈せずに座ってはいられた。
 お話はわかったようなわからんような。知人がレントンが最初から最後まで何もしないで肝心なところはニルヴァーシュエウレカ任せ、と言っていたんだけれど、確かにその通りだと思った。
 声優陣は概ね良かったです。