野村美月『”文学少女”と繋がれた愚者』
- 作者: 野村美月,竹岡美穂
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/12/25
- メディア: 文庫
- 購入: 10人 クリック: 90回
- この商品を含むブログ (304件) を見る
志賀直哉といえば日本近代文学史上に名高いアレな人、ナチュラルにノー屈託に傲慢なイヤな人なわけで、大宮のモデルがどうも志賀らしい、という時点で大宮なる人物の解釈が、ほれ、アレじゃん? 裏で野島をものすごく見下していたに違いない、と思えてくるじゃん? 杉子も野島をキモがっているだけだしね。この二人がくっつくに当たって葛藤があった、という確証はどうしたって得られない、というか、そのように言い繕った原稿を見せ付けられるだけ。ここにある種の表現者特有の残酷さ、を見出すことは不可能ではないだろう。友情を裏切ったことも、創作のネタでしかない、という。
で、まあ、そんなありとあらゆる疑念をわきあがらせる往復書簡を紹介したあと、小説は唐突に、野島の強がりだけを示して打ち切られる。そこはまあ、ちょっとかっこいいのだが。
恋愛事件の残酷さよりは、大宮と杉子の悪意の方が印象に残り、その点スケール小せえなあ、とも思うのだが、漱石が激賞した武者小路の正直さってのは多分、こういうみみっちさであって、みみっちくてイヤな話を読んだなあという喉越しの悪さは日本文学史上においてもトップクラスなのかもしんない。
ところで『友情』はマイマザーのオールタイムベストで、そんなマザーは志賀直哉、殊に「小僧の神様」が大ッ嫌い*1、理由は作意がわかりやすすぎて作中人物に対して不実だ、というものなんだけれど、語ることの罪/傲慢という観点から言うのならば、『友情』は一応それを告発する小説論小説、メタフィクションであると言うことは出来る、てのはまあ別にそんなしゃっちょこばって言うようなことでもなくて作中作なんて仕掛けを持っている以上メタフィクションには決まっているのだしであれば語りの倫理に踏み込むのは当たり前っちゃ当たり前よねでも一応。
そういう観点がでは『文学少女と繋がれた愚者』の中で十分に検討されたかっていうと全然そんなことはなくて大宮の苦悩に単純に焦点はあってしまうわけで、『友情』のメタフィクショナルな仕掛けはまあ、さらっと無視される、と言っていい。作中現実と作中作の問題意識は遠子先輩のアドリブで至極単純に一致させられてしまう。
心葉の美羽への裏切りってのも語りの倫理云々てよりはもっと単純なパクりパクられっぽい気配だし、なんかこう、まあ、そんな自覚的に物書く野村美月なんて僕らのグラン野村美月じゃないっちゃそうなんだけど、欲望ドリブンな小説だよねえ、以上の評価はむずい、というか。欲望ドリブンっぷりは荒山徹級だとは思うんだけど。近代日本文学をトリビュートしたい、が今回の欲望ね。
なお、文学少女いい女だな、とは思った。おっぱいタッチハアハア。
*1:太宰治は大好き、なお。フランソワーズ・サガンも。
公野櫻子『ストロベリー・パニック!』3
- 作者: 公野櫻子,たくみなむち
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 文庫
- クリック: 21回
- この商品を含むブログ (29件) を見る
別にくだくだしく説明しなくても、読んで、少女たちの抱え込まされた事情とそれぞれが辿り着いた境地を追いかけてもらえれば、公野先生が逃げなかった事、少女たちが誇り高く戦っている事は一目瞭然なので、各自確認しておくように。いや、というか、みんな読んで。読んでイヤーブック的なものとかに票入れて。無視されていい作品では絶対にないし、そも公野櫻子抜きで00年代そっち系文化語っちゃダメだから!
ヘタレ街道一直線の詩遠会長が今回に限り頼もしい、とか、夜々ちゃんの結論は当たり前だけど見落としがちな関係性だね、とか、天音王子も木石ではないんだねとか、千華留様はお優しいなあとか、光莉ちゃんはあんまりにも魔性の女だなあとか、愛せなかったトラウマネタキタコレとか、まあ、色々、全部よいので全部読め。
静馬様の事情は雁屋哲『黒の鍵』以来の衝撃。上流階級ならばなるほどそういうこともあろう、という意味で、お嬢さま学校の設定を生かしきった、とは言えるのではないか。権力の座に程近い人々を設定することで隠微な権力構造を見事に濃縮して描破している、と言い換えてもいい。女であることの不自由、男のいない楽園の外で待ち構える、婚約者=男=強姦者としての天皇。
そうなると、ごっこ遊びの側面の強い――その事は真箏絡みで要と桃実が懇切丁寧に説き明かしてくれる――アストラエアでの生活の最大の名誉がエトワール選=天皇ごっこである、というのは中々に示唆的であることであります。天皇制的でない空間に関する想像力を彼女達は持てなかったがゆえに、そこから軽やかに逃走した雅姫姉さんは五大スターの永久欠番となったわけですが、そうなると静馬が天皇家との対決を決断してアストラエアに戻った、というのはまさに新時代の幕開けと捉える事ができます。
ええ、まあ、素晴らしいです。
ネギま!?
こういうの、たまに書き出したくなるよね。
仮契約の順番。
- 雪広あやか
- 古菲
- 佐々木まき絵
- 明石裕奈
- 春日美空
- 大河内アキラ
- 和泉亜子(山川琴美)
- 那波千鶴
- 村上夏美(相沢舞)
- 超鈴音(高本めぐみ)
- 四葉五月
- 柿崎美砂(伊藤静)
- 椎名桜子
- 釘宮円
- 葉加瀬里美
- 長谷川千雨
- 籠宮真名
- ザジ・レイニーデイ
- 朝倉和美(笹川亜矢奈)
- 相坂さよ
神楽坂明日菜/桜咲刹那/近衛木乃香/宮崎のどか/鳴滝史伽/鳴滝風香/長瀬楓(白石遼子)/早乙女ハルナ/綾瀬夕映は仮契約済み、
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(松岡由貴)、絡繰茶々丸は除外。
()で声優名がついてるキャラは名前or綴りが思い出せなかったとおもいねえ。