シリーズ今日のどうかと思った声優記事。
http://d.hatena.ne.jp/n_euler666/20090915/1253041983

そいえば,今期って堀江さんの活躍が凄まじいよね.

いろんなキャラをやってる.

芸幅が広いというか,どんな役でも使える便利な声というか,どんな役を振っても平均点以上を確実に出せるアベレージヒッターって感じか?

いや,それにしても,ここまで柔軟性の高い声ってのはすごいよね,ほんとに.

 ちげえって。話が逆だって。
 堀江由衣的なものが求められる役柄が多様化しているから堀江由衣の仕事が増えてるんだって。
 堀江由衣的なものとはどういうものか?
 それはまあ色々あるけれど、一言で言えば天使性。
 浮世離れしていながら、決して手が届かなくはない、そういう距離感。
 『うみねこ』の真里亞が天使的だ、というのはまあ、議論の余地のないところでしょう。『化物語』の羽川と『咲』のキャプテンは似たようなっちゃ似たような、完璧さと親しみやすさの兼ね合いがまさに天使なキャラクター。『うみものがたり』のウリンは堕天使である以上天使にしか演じられない。『かなめも』『青い花』もある種の浮世離れ感を求めての起用であることはあきらか。
 では、『GA』は。中では『GA』だけは浮いて見えます。これは、天使性を転倒させる企みとこそ言うべきでしょう。
 地声の天上性で言えば名塚佳織堀江由衣>(越えられない壁)>徳永愛沢城みゆき戸松遥
 一方キャラクターの天上性はキサラギ≧キョウジュ>(越えられない壁)>ノダミキ>トモカネ>ナミコさん。
 概ね、声の天上性の逆順でキャラクターを当てていることがわかります。
 キャラクターの浮世離れ組、キサラギ・キョウジュはいずれも過剰に声を作らせることで不自然さをかもし出しています。自然に天使な堀江由衣を最も地上的なところにおくことで、声優自身が本来持っている資質に縛られない世界観を獲得しているわけですね。
 演出主導で作ったテンポに声優を従わせようとする『GA』は本質的に声優アニメではないのだけれど、そうでない、ということをこれだけ自覚的に徹底できているのならば、それはまあひとつの完成として高く評価されねばなりますまい。
 で、『GA』自体の評価はさておき、このような逆説的な方法が可能たらしめられるためには、素で天使的な堀江由衣の声が必要になるわけで。
 堀江由衣が先、役柄が先かで言えば堀江由衣が先行している。それこそが堀江由衣の本当の凄みなんじゃないでしょうか。

花澤さんとか
豊崎さんとかは,今のところ「できる役どころは一つしかない!」って具合に,ピンポイントで仕事が振られてる感じするけど

(「ぽけぽけ〜っとしてて犬の様な役なら豊崎さんに振ろう」みたいな)

 ロリ妹一本槍のハナカナ*1はさておいて豊崎愛生に対する認識は浅いと言わざるを得ません。『うみものがたり』の大島はどこをどうひっくりかえしても「ぽけぽけ〜っとしてて犬の様な役」ではないでしょう。というか、あむろの押しの強いボケと唯のおっとりバカとかなの気弱はわわドジを同一視できるんならなんでも同じになってしまわないっすか。それらを貫く豊崎愛生性を犬っぽい、と形容しようと言う提案ならばこれは聞く耳も持ち得ますが、犬っぽい役柄が先行して存在し、そこに豊崎が押し込まれている、という考え方は受け入れがたいです。「犬」という喩え、それを導き出させる豊崎の存在がなければあむろと唯とかなは単に違う。
 
 ところでこの記事、ブコメがまたヒドい。
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/n_euler666/20090915/1253041983
 さて。
 元記事を読んだ段階でこれでは堀江由衣沢城みゆきの区別がつかないとミルナさんと話していたわけだが、実際にそれを同一視するようなブコメが多くてへんにょりする。
b:id:kaitoster

沢城と堀江あたりが何でもできるポジションにいるのかなという気はする

b:id:Crimson_Apple

イチローみたいなもんかw?ほっちゃんはキャラ作りがうまい。似たようなタイプあげればみゆきち。ほんとに器用なタイプだと思う。

 沢城みゆきと言えば口調と声の作りこみに精を出すタイプで、多少テンションの上下はあれで手持ちの声はどの役にも全部つぎ込むタイプの堀江由衣とはあきらかに違うのではないかと。キャスティング的にも沢城のほうがとりあえずで起用されている感が強いですし。
b:id:rinsenan

うーん、存在感は圧倒的なんだけど、芸がないなあ、とは思うんだよね/何をやってもほっちゃんは天使/最近沢城先輩がその境地を目指してるっぽい/ほっちゃんは役者の質として松山鷹志と近い、とかふかしてみる

 松山鷹志はわからなくもない、本芸のゴツオヤジ感をベースにそれの聞きなさせで幅広い役柄に対応するタイプ、という意味では確かに近い声優性だと思うのだけれど、日本で二番目の声優批評系ブックマーカーであるrinsenanさんにして沢城みゆきをそこに並べるのか、という疑問がある。沢城みゆきは声や芝居そのものを変える、演じ分けタイプで聞きなさせタイプではないように思うのだけれど。弁明を求めます。イヤマジで理路が知りたいっす。
 おまけ。
b:id:americanboss

堀江由衣がアベレージヒッターなら、駿足巧打で小技も使える沢城みゆき、パンチ力がある主軸のパワーヒッター田村ゆかり予告先発すると客が入る先発三本柱の水樹奈々、当たればデカい恐怖の7番豊崎愛生って感じ

 全て理解できなくて震えました。
 俺の中のイメージだとNPBの左打者に喩えれば田村ゆかり石井義人水樹奈々は福浦、沢城みゆきは本多、堀江由衣は小笠原、豊崎愛生は栗山という感じです。
 つまり崩されてもヒットにはする、最低限でも犠飛は上げる田村、絶対的なツボがあってそこへの失投を逃さない水樹、足・守備・小技が魅力でノーパワーな沢城、崩されずパンチ力抜群の堀江、なんでもできる豊崎、という。
b:id:Amerikan

野球で言えば元ロッテの五十嵐とか、元広島、現巨人の木村拓みたいなものか

 野球で言えばギャラードや大塚がいた頃の中日岩瀬だと思います。

*1:文学少女』透子先輩は多少新しげに見えるが、これは本多知恵子こおろぎさとみも歩いた道。幼げな地声の声優にあえて大人っぽい声を出された時の特有のエロスの線を狙った起用。この程度の裏技でガタガタ言う奴はサターン版『EVE burst error』の弥生で抜いてないシロウト。