例のBD化投票に入れたコメントが結構よくかけた気がするのでサルベージしておきます。
 『シムーン』と『スカイクロラ』と西村純二押井守の四題話。
http://ameblo.jp/bdmeister/entry-10325396151.html
 世界の基底的現実に向き合わされないための猶予として戦争があるのだとすれば、畢竟戦争とは思春期のメタファーであるのではないでしょうか。だとすれば、思春期の少女たちが少女であるがゆえに戦わされ、そして少女であり続けるために戦うこのシムーンという物語はまさに戦争の普遍的な意味を抉り出していると言えるでしょう。

 このようなモラトリアムとしての戦争という考え方は、押井守監督作品、殊に世界の基底的現実を戦争と見た機動警察パトレイバー2の戦争観の正反対に位置するものです。

 思えば、本作の西村純二監督は、うる星やつらの演出スタッフとして頭角を現した作家でした。押井脚本の傑作として知られるみじめ!愛とさすらいの母の絵コンテを切り、ビューティフルドリーマーの処理演出を務めた、そんな西村監督が戦争観において押井守の反対をついて見せた。

 これは、ひとつのアニメ史的事件であります。

 このアニメ史的事件であるシムーンは、フロエ=西村純二、アーエル=押井守として理解することで、作品の名前で勝負するTVシリーズの職人的な監督として生きる道を選んだ西村監督と、個人の名前で勝負する作家的な映画監督となった押井監督の物語としても解することができるかと思います。

 このような観点に立つと、同じく思春期と空戦を絡めた作品である押井監督のスカイクロラシムーンへのアンサーストーリーとして浮上することにもなります。

 ならば、その両作品をどちらも同じブルーレイメディアで見たい、と思うのは当然の人情ではないでしょうか。

 また、シムーン押井守プロデュース・西村純二監督の風人物語にはじまる、名塚佳織ヒロイン三部作の第二作にあたります。第一作の風人物語、これもまた忘れがたい佳作ですが今回の候補からは漏れているのでとりあえず諦めるとして、第三作であるtrue tearsとあわせてのBD化、というのも粋なのではないでしょうか。